相続時精算課税
- 税理士 松井千春
- 2017年3月10日
- 読了時間: 4分
長く更新できずに申訳ありませんでしたm(__)m
今日は前回の続き、相続時精算課税についてです。
1. 制度の概要
原則として60歳以上の父母又は祖父母から
20歳以上の子又は孫に対し
財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です
この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。
また、この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。
このように、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。
父母、祖父母全員からの贈与についてこの制度を選択しなければならないわけではないです。
例えば父親からの贈与は「相続時精算課税制度」で、母親からの贈与は「暦年贈与」でということでも構わないわけです。
注意しなければならないのは、一旦相続時精算課税制度を選択した場合は暦年課税贈与へ戻ることができないこと。父親からの贈与について相続時精算課税制度を選択した場合は、その後の贈与はずーっと相続時精算課税制度の贈与になるということです。
2. 税額の計算
(1) 贈与税額の計算
1年間に贈与を受けた相続時精算課税制度の適用財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算します。
その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。
この特別控除額は2,500万円が限度です。一度に2,500万円使ってもいいですし、複数年にわたって使っても構いません。
特別控除額をすべて使いきっても税率は20%なので、暦年課税贈与と違い多額の財産を贈与しても贈与の税負担は軽くて済みます。
なお、相続時精算課税を選択した受贈者が、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税の税率を適用し贈与税額を計算します。
(注) 相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。
(2) 相続税額の計算
相続時精算課税を選択した方に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。
なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。
3. 適用するなら
・親が所有する賃貸マンションを子へ贈与する。
毎年収益を生むマンションを贈与すると、毎年の所得をお子さんに移転できるので相続対策としておすすめです。
・値上がりの可能性の高いものを贈与する。
相続時精算課税を適用した贈与は、その贈与者が死亡した際に相続税の計算に含むことになります。
その相続税の計算に使う財産の価額は贈与時の価額となっています。
つまり、贈与時よりも相続時に値上がりしていれば、贈与者が財産を保有し続けていた場合より相続税が少なくて済むわけです。
確実に価値が上がるかどうかは不明でも可能性があるならおすすめです。
相続時精算課税制度は名前の通り、相続時に精算する贈与です。
選択すると暦年課税には戻れないという制約もあります。
制度を選択される際は、相続税も視野に入れて検討しなければなりません。
是非、専門家にご相談ください。
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