配偶者と贈与と相続…『贈与』か『相続』か?
『贈与税の配偶者控除』と『配偶者の税額軽減』どちらも配偶者に税負担が軽い状態で財産を移転できます。
ではどちらがより有利なんでしょうか。
それはやっぱりきちんと確認してからですね。
まずは、相続税のしくみについて
相続税は正味の遺産額が基礎控除額を超える場合に発生します。
正味の遺産額から基礎控除額を控除したものが課税遺産総額です。
課税遺産の計算の流れは以下の図の通り(国税庁HPより抜粋)です。
課税遺産総額の計算

正味の遺産総額は、⑶で相続開始前3年以内の贈与財産を足しています。
つまり、亡くなられる前3年以内の贈与は相続税の計算の基礎に入れないといけないんです。
では、配偶者に居住用財産を贈与しても、贈与してから3年以内に贈与してくれた方が亡くなったら意味がないの?
安心してください。贈与税の配偶者控除分の贈与は正味の遺産額に足さなくていいんです。
なので相続税に影響しません。
それじゃ、絶対贈与したほうが有利でしょうか?
財産を取得したときにかかる税金は贈与税や相続税だけではありません。

不動産という財産を取得すると、所有権を移転したことを記すための登録免許税という税金がかかります。
贈与による移転だと2%、相続の場合だと0.4%と贈与に比べて1/5です。
この税率は固定資産税の評価額に対して掛けます。
不動産取得税も固定資産税の評価額に掛ける税金です。
贈与の場合には3%、相続の場合には課税されません。
不動産取得税は住宅用については一定の軽減があります。
仮に、配偶者に居住用財産の贈与をしなくても相続税がかからないのなら、贈与をして上記のような税金を支払うのはもったいないかもしれません。
相続税は正味の遺産額が多ければ多いほど負担する税額は大きくなります。
国税庁HPより

上図の①を見てください。
課税遺産総額を法定相続分であん分した金額に対して相続税率を掛けます。
これが相続税の総額になり、この相続税の総額を実際に取得した財産の割合であん分します。
つまり、課税遺産総額が小さければ、相続人全員の税額も下がるのです。
配偶者は税額軽減がありますので納める税金はゼロになっても、他の相続人のことを考えると
やはり正味の遺産額が小さいほうが節税になります。
節税対策とういう意味では、先に贈与をして遺産額を減らせるのでかなり有効ですね。
主に税金面で有利かどうかを書きましたが、居住用不動産を配偶者に贈与するということは、
その財産を取得された配偶者にとって、その後の生活が豊かになるんじゃないでしょうか。
配偶者からの愛情の証しとして、自分が安心して住み続けられる財産を得るということ。
心に余裕が生まれるということが一番なんだと思います。